香東欧遠征2019 ⑥ キシナウ

またも一ヵ月近い間が空いてしまった2019年夏遠征。今回はキシナウでの2日間。

一時期、ツイッターの海外鉄道趣味者を賑わせた「キシナウ西ストレート」を訪問しました。

2019.8.17

ドニプロを出発した 241ПБ列車は時刻表通りにオデッサ駅に到着。列車を牽引していたのは貨物用電気機関車のVL80。ツイッターで得た情報によると、旅客用機関車が足りていないらしい。

ウクライナは電化方式が25kV交流と3000V直流で混在している。前回記事にしたChS7は直流だが、ChS8は交流。このVL80は交流でVL10/11は直流という具合だ。つまり、この区間では交流用旅客用機関車のChS8が不足している…のかもしれない

オデッサ駅といえばホーム側から見る姿のほうが「らしい」かもしれない。駅前広場は狭く、立派なドーム屋根が映えないのである。でもホームから撮った写真で駅舎が写っているのはわずかスマホで撮ったこの一枚だけ。長編成のエレクトリーチカも停車していたのだし、どうせ時間もあったのだからスナップ写真に精を出すべきだった。キャリーバッグが邪魔とはいえ、後の祭り。

オデッサは黒海に面しており、黒海を渡るバックパッカーが経由する街ということで、旅行系ブログが多くヒットするし、ガンダムの「オデッサ作戦」でも(まあ、名前だけ)知られた街。でも今回はオデッサの街に用事はなく、陸路でモルドバに入国する都合で経由するに過ぎない。

モスクワからキエフに向かう際に乗った列車の終着はまさにこれから向かうモルドバの首都、キシナウであった。列車のようにウクライナからモルドバに入る旅客列車はモルドバの東部に位置する沿ドニエストル共和国を通過するのだが、ここはモルドバからいわば勝手に独立した地域なので、ここを通ってしまうとモルドバ入国印が押印されず、出国時に厄介が生じてしまう。

ところが、オデッサからキシナウに向かうバスは沿ドニエストル共和国を通過しないのでこれに乗る訳である。

バスターミナルは駅北西の国道16号線の脇にあるЦентральный автовокзал。訳すと中央バスターミナルだが、国際便がこちらから出発することになっているらしい。 駅からバスターミナルまで徒歩3kmくらいなので歩くつもりが、石畳の歩道でキャリーバッグを引くのは予想以上に大変で早々にUberを呼んでバスターミナルへ。

ターミナルに入ると、体格の良い男性に行き先はどこだのなんだの言われ、ダメ、みたいなジェスチャーまでされたが、無視して窓口でキシナウ、アジンと適当に伝えると無事にレシートが発券された。

管理人は事前にチケットは予約しなかったが、odessabus.comというサイトから購入できる。2020年1月時点では、Google検索してヒットするブログ等に掲載されているキシナウ行きのバスの時刻表と、検索結果が少々異なるので最新情報は各自で確認することを推奨。

8時20分発のバスがあり、ターミナルに着いたのが8時半くらいだったのでもう出発済みとか言いたかったのかもしれない。 次の10時20分のバスに乗ったが、これは満員だったのでやはりチケットは事前に買うのが無難かも。事前情報通り、トランクに入れる荷物は別料金。

満席とはいえ、運のよいことに座席は通路側でそこそこ快適で、モルドバに入るとひたすら田畑の中と地方都市を通って、時刻表通りにキシナウに到着。特に面白みのある写真は撮れそうにもなかったし、スマートフォンですら道中の写真は一枚もない。

キシナウでは北バスターミナル(Autogara Nord)に到着。これは問題ないのだが、ターミナルにの携帯ショップに入るとなんとSIMが無いという(モルドバで使えるSIMは事前に手に入らなかった)。

幸いなことにホテルまで2km程度で、地図のキャッシュもあったので徒歩でホテルにチェックイン。

Bulevardul Ștefan cel Mare și Sfînt

SIMは結局、メインストリート 「シュテファン・チェル・マレ・シ・スフント通り」の適当な携帯ショップで設定してもらった(上の写真にショップは写っていない)。事前情報通り、旅行客向けのプランみたいなものを若い女性の店員が勝手に適用してくれたので大助かり。

SIMを手に入れたのでそのまま歩いて有名撮影地の「キシナウ西ストレート」に向かったが、曇られた挙句に目当ての列車が予定より短い編成でやってきて敗北。

「キシナウ西ストレート」 からの撤収中、舗装工事に出会った。メインストリートもそうだが、キシナウは非常に綺麗な街で驚いた。首都だから綺麗という理屈がすべての国で成立するとは思わないが、少なくとも、キシナウはヨーロッパ最貧国とは思えない街並みである。ゴミは清掃され、この通りに道路は補修される。公園も手入れされているし、街を維持する努力が払われているのが感じられて、まったくの他人事ながら嬉しかった。

この日の夕食は珍しく、日本食料理屋に足を運んだ。日本食には全く飢えていなかったけれど、ツイッターのフォロワーさんが紹介していたとなると訪れてみたくもなるのが人情。Kotobukiという日本人オーナーの料理屋で、価格もお手頃。味もザ・日本食。まあ旅行中に一度くらいはこういうのも良いかなと思ったものの、一人で行って楽しいようなところではないかも。


2019.8.18

翌日はホテルで遅めの朝食を食べてから出発。「キシナウ西ストレート」は朝の列車も撮影可能だが、撮影地まで朝から歩いていく元気はなかった。写真はモルドバの大統領府。

大統領府の前はさすがに路駐もなく、トロリーバスの撮影にはうってつけ。ヨーロッパの支援で導入されたピカピカのトロリーが大多数を占めている。トロリーの本数は相当多く、古い形式のバスもちょこちょこ走ってはいるが、運用が絞られているのか撮影していた30分くらいでは大統領府の前では1回も見なかった。

日中は特に撮影できる列車もなく、これといった観光名所もなく暇なのでマクドナルドで軽食を食べたり、公園のベンチでひたすらスマートフォンを触って時間を過ごしていた。

公園のベンチで座っていると、東洋人の青年が「モルドバで初めて東洋人を見た」と言って話しかけてきた。マレーシアだかシンガポールの華人で信心深いクリスチャンで奉仕活動に来たと言ってたが、ひたすら1時間近く自分がいかに聖書を信じているか”一方的に”語られた。管理人の暇つぶしには最高だったが、申し訳ないが、 “一方的に” マシンガントークで宣教しても効果は薄いと思う…

2019.8.18 Visternichen-Ghidighici, Chişinău
#105, CFM D1-753

信心深い青年と別れて、再び「キシナウ西ストレート」へ。

期待の高まる夕日を浴びて、ブカレスト行き105列車が通過した。この列車、以前はM62牽引だったらしいのだが、2019年夏では2TE10の片割れが担当していた。

2019.8.18 Visternichen-Ghidighici, Chişinău
#6831, CFM D1-753

2TE10の煤煙を浴びたおよを1時間後、待ちに待った Д1 、登場。

先行の105列車の牽引機は前日と同じで、じゃあD1も同じ編成が来るのだろうかと気を揉んだが、所定の4連で通過して無事に勝利を手にした。平日だと2編成使って8連らしいのだが、キシナウは土日で訪問していたので、そこは仕方ないポイント。

ホテルまでの遠い帰り道もなんのその、大勝利を手にした夕刻のキシナウ、大統領府の前の凱旋門。

ホテルはキシナウで一番古いらしい「キシナウ ホテル」に宿泊。ソビエト様式の堂々の風格…なのだがホテルの写真はほぼ撮っていない。何度も自戒の念を込めて書いているが、自分はもっとスナップ写真に力を入れるべきだと思う。

ホテルは半分廃墟と化しているが、部屋は普通に綺麗。適当に安い部屋を予約したが、アップグレードなのかそれしか部屋がないのか、2部屋続きの上質そうな部屋に案内された。部屋自体は問題ないとして、鉄道ファンが使うには「キシナウ西ストレート」からかなり遠いのが難点。観光に使うにしても、大通りの端にあるので立地は微妙。

窓からキシナウの日没を眺めつつ、2日間のキシナウ滞在が終了。


「キシナウ西ストレート」

アクセスは地図のような感じに。起点のアルビショアラ通りは一応バス停があるのだが、ほぼ来ない。キシナウはYandex Taxiが使えるのだが、これも台数が少ないのか全く来ない。 メインストリートのトロリーも系統が良く分からないので使いにくい、となると結局、ホテルから徒歩になるのであった。


といったところで、キシナウでの2日間。バスでの越境は初めての体験だったが、あっけなく終わった。バス車内に武装した管理官が立ち入るわけでもなく、パスポートの回収は運転手が行うので、鉄道での越境のほうが幾倍も物々しい。

キシナウについてSIM難民になったのは予想外だったが、これはキャッシュを事前に読み込んでいたのが功を奏し、バスターミナルとホテルが徒歩圏で助かった。

撮影は「キシナウ西ストレート」に2回訪問できる旅程を組んでいたのがこれも功を奏し、無事に良い光線でD1形気動車の撮影に成功して大勝利。

次回はキシナウから北に移動し、ドロキアという街でさらにD1形気動車のカットを増やすことになる。来月末にウラジオストクに行くので、それまでにもう2,3本記事を仕上げたいとは思うのだが。



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