香東欧遠征2019 ② ステプノゴルスク

カザフスタンで是非、訪問したいと考えていたのが首都ヌルスルタンから北へおよそ200キロの場所に位置する街、ステプノゴルスクでした。

ステプノゴルスク中心部からおよそ20キロの距離を走る専用鉄道は全線電化されつつも、電化路線と接続しておらず、世界一孤立した電化路線と言っても過言ではありません。そして、そこに走るソ連時代にごく少数製造された3ドア通勤電車、ER22形電車を使用する世界最後の路線です。

2年ほど前に、この土地を走るER22形電車の写真を目にして以来、いつか自分で撮ってみたいと思っていたのでした。


カザフスタン到着翌日、ヌルスルタン鉄道駅の傍にあるバスターミナルの窓口でチケットを購入し、ステプノゴルスクへ向かいました。

2019年8月9日
#603K дача- Степногорск (ポイント1)

速度制限を無視して爆走するバスに揺られ、予定より早くにステプノゴルスクに到着しました。徒歩で郊外の撮影地へ。

3キロポスト停車場の脇に三脚を構えて、しばらく待つと遠くから待ちに待った列車がやってきました。歩いている途中、既に列車を撮影しているのですが、事前に決めておいたポイントで、これまた事前に目星を付けておいた列車を撮れるのがやはり嬉しいものです。

キャプションに撮影ポイントを書いています。記事の最後に地図を入れるので、ぜひ参考になさってください。

光線の都合、12時~14時台は上手い具合に撮れそうな列車が無いように思えたので、一旦市内へ戻りました。2,3時間程度待っていても構わなかったのですが道路脇の開けた場所で延々と待つのはあまりに目立つので、好ましくありません。

一旦、市内へ戻って昼食ついでに駅のホームで暫く時間を過ごしました。この専用鉄道では現在5編成が運用中ということですが、ステプノゴルスク駅で日中3編成の並びを目にすることが出来ます。


#407 Прогресс-СПЗ (ポイント2)

腹ごしらえをして、午後の列車の撮影へ。駅前のバス停で暫く待っていましたが、一向にバスは来ないので下り408列車で撮影地向かうことにしました。

СПЗ駅で下車し、線路沿いに北へ進むと専用鉄道が国鉄線の上を交差する築堤に到着します。次々に湧いてくる雲に怯えつつ待っていると、遠くの工場地帯からやってくる列車の姿が見えました。太陽に雲がかかるその寸前、見事にフレームインしたのでした。

築堤から左手に目を向けると、ちょうど国鉄線の貨物列車が入れ替え作業を行っていました。この国鉄線が非電化であり、この非電化路線以外と専用鉄道は接続していないのが「世界一孤立した電化路線」の所以です。

国鉄線の旅客列車の本数は極めて少ないらしいですが、貨物列車は2日の滞在中に4回ほど動いているのを見かけたので、ステプノゴルスクの各工場は積極的に稼働しているのでしょう。

晴れていれば日没前の列車をステプノゴルスク駅近くで撮影予定でしたが、雲はそのまま日没まで残ったので投宿。

Гостиница Степногорскというホテルに泊まりました。インターネットの予約サイトから予約できるホテルが見当たらず、メールにも返事が来ずに困っていたところ、TwitterでFAXを送ったら返事が来たとアドバイスを頂き、無事に宿泊できました。


2019年8月10日
#404 Пляж- СПЗ (ポイント3)

ステプノゴルスク2日目朝。再びСПЗへ向かい、今度は南へ少しだけ歩きます。三脚を構え、踏切の監視員に見つからないか心配しながら待っていましたが、定刻を過ぎても列車はやってきません。

平日は時刻表通りに運転していたのに、土日祝日は運休なのだろうかと首を垂れた頃、遠くから列車の音が聞こえてきました。朝陽を浴びるER22形電車の姿を無事、記録できました。

СПЗ駅前からバスに乗り、鉄道の最奥、工場地帯を目指しました。

終着駅 Заводскойで折り返し出発を待つ列車を撮影していると、運転手に話しかけられ、翻訳アプリを使い、運転手と暫く会話することになりました。

日本から来たことを伝えると非常に喜んでいました。一方、車両に落書きする不届きものが居るから十分気を付けるようにと(翻訳アプリでニュアンスが変わっていなければ)強く念を押されました。

この運用では運転手や整備士が車内に待機したままでしたが、Заводской駅は道路から奥まった位置にあり、人目につきませんから、無人のまま留置される場合などは確かになあという気がしました。

運転手に奥地に来ていることは理解していると伝え、写真映えするからヘッドライトを点灯して貰えないかと伝え、撮影地へ先回りしました。

#403 Депо-ГМЗ (ポイント4)

急ぎ足で撮影地に先回りし、自分の準備が整ったころに出発を知らせる汽笛が聞こえました。カーブの向こうからヘッドライトを点灯した車両が現れ、甲高い汽笛を連呼して、素晴らしく青い空を背景に通り過ぎて行ったのでした。

ソビエトな雰囲気の残るモニュメントを眺めつつ、Заводскаяに戻りました。

Заводскойには専用線の車両工場があります。ER22はもう古い車両で、置き換えの話が出ては消えるという話も目にしますが、どうなのでしょうか。車両工場には大量のER22が残っていましたので、現在運用中の5編成を修繕しつつ使うには十分量に見えました。もっとも、これもまた私の適当な戯言に過ぎません。

車両工場はこの時間、完全に逆光だったのと、周辺を兵士が歩いていたので写真はありません。

土日ダイヤでは9時台の次は16時過ぎまでЗаводской駅を出発する列車が設定されていないので、満員のマルシルートカに乗って市内に戻ったのでした。

市内に戻り、ステプノゴルスク鉄道駅。旧ソ連圏では鉄道駅は単にВокзалと書かれることが多いですが、掲げられたСтепногорскの文字は素晴らしいです。

バスターミナルは鉄道駅の脇です。如何せん土日ダイヤは本数が少なく、撮影効率が悪いので早々にアスタナまで15時のバスで撤収しようと考えて戻ってきたのですが、これが満員で肝を冷やしました。

次の17時のバスのチケットが買えたので良かったですが、これも出発時満員でした。アスタナ行き第一便が6時半で窓口は朝から空いているでしょうから、活動開始する前に帰りのバスのチケットを買っておくのが良いでしょう。

アスタナへのバスは時刻表通り19時過ぎに到着。 数時間前までステプノゴルスクの線路脇に立っていたのが嘘のようですが、まだ遠征も始まったばかりです。

ここは疲れた体に風味豊かなソビエトアイスクリーム。最高。


兎に角、無事にアスタナに到着し、1泊2日のステプノゴルスク撮影は全行程を無事に終了しました。天候に恵まれ、撮影を阻まれることも無く、写真持ち帰ることが出来るのはこの上ない喜びです。

1泊2日の滞在で満足する写真を撮ることが出来ました。それでも、終着駅のЗаводскойで時間が十分に取れなかったのが残念ですし、夕日を浴びる姿を撮影できなかったのも残念です。

首都からのアクセスは悪くありませんから、また訪問することが出来ればと思いつつ、この記事はひとまずここまでとします。


補足1:駅所在地・撮影ポイント等の地図


補足2:バスについて

市バスは基本的に、鉄道に並走してステプノゴルスクと北の工場(Заводской)を結んでいます。30分に1本程度は走っているのでバス停で待っていれば乗れるのですが、例えばダーチャ村の近くやСПЗ(途中の工場)からЗаводскойへ向かう下りバスは路肩に止まるだけで、地図のバス停アイコンとズレているので非常に不明瞭です。一方、ステプノゴルスクへ戻る上りバスは各停留所に待合所が設けられているので待っていれば乗れるという訳です。

路線図と系統案内は唯一、バスの車内で貼られていました。地図の左側がЗаводской、右側がステプノゴルスク市内を示します。マルシルートカは1系統から3系統があることになっていますが、見かけたのは2系統のみ。それ以外が運行されているかは不明。



2023年7月追記

2023年現在もステプノゴルスクの電鉄はおおむね従来通りに運転されていますが、ステプノゴルスクへのアクセスとホテルの状況が大きく変わっています。

2023年現在、ステプノゴルスクとアスタナを結ぶバスは1往復のみです。また、Гостиница Степногорскは少なくとも2022年5月の時点で営業していません。他の宿はあります。

「香東欧遠征2019 ② ステプノゴルスク」への2件のフィードバック

    1. コメントの承認が遅くなり申し訳ありません。

      正直、産業鉄道という言葉は実態を表しません。中ほどのСПЗの工場、工場と国鉄との連絡線、終点のザヴォツコイ(つまり工場の街)などありますが、鉄道は工場の私有鉄道ではありません。

      ですから、一般の人も利用できます。(料金は40テンゲ?忘れてしまいました。細かいことはメモを残すべきですね…)中間の工場の作業員の乗車も多いですが、ダーチャに住んでいる比較的高齢の方や、週末をダーチャで過ごす若者集団なども利用しているのが印象的でした。

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